Before After

宮城県刈田郡・蔵王酪農センター

私ども蔵王酪農センターは、酪農の電化・機械化による合理化の研究などを目的に、昭和35年神奈川県で設立されました。
昭和39年に現在の所在地の宮城県蔵王町に移転し、酪農を続けながら、昭和55年には当時国内ではあまり取り組まれていなかったナチュラルチーズの製造を開始いたしました。その後、自家製造したチーズを販売する直売店や飲食店も作り、酪農を中心にして、乳製品の製造から販売までを一貫体制で行うようになりました。

現在、牧場事業、チーズの製造販売事業、酪農の普及推進事業(体験や飲食関係)、研修事業と、4つの部門の事業を40名の職員で運営しております。
牧場においては、約110頭の牛を飼養し生乳の生産を行うとともに、牧場の一画をふれあい牧場として一般の方々に開放しています。

地域交流牧場全国連絡会には発足の準備段階から関わり、会の発足と同時に入会いたしました。
会の歩みとシンクロしながら、私どもの交流事業も進んで参りました。 私どもの牧場の変化を振り返ってみたいと思います。

《地域交流牧場全国連絡会発足以前》
私どもの牧場では、生乳の生産に加えて30余年ほど前からナチュラルチーズの製造と販売を始め、早くから消費者と直接向き合う必要がありました。また地元の小学校などから牧場の見学や体験の希望などもあり、そのつど見学や体験を受け入れていました。
ただ、受け入れ方としては、相手と話をしながらその時々のやり方で行ってきました。
明確な指針をもって体系的に受け入れを行っていたわけではなく、要望があるから仕方なく受け入れを行っているような状態で、交流活動自体は試行錯誤を繰り返しながら、「暗中模索」「五里霧中」といった状況だったように思います。
社会的にも、体験や交流に対してそれほど要望も大きくなく、評価も高くなかったように思います。
唯一、「農業のもつ多面的機能」の発揮のひとつの形としてのみ評価があったような気がします。
そんな時、「牧場スタンプラリー」や中央酪農会議を介して全国の牧場の活動を知り、全国に同じような活動をしている牧場が沢山あることを知りました。
また、同時期に、海外の「酪農教育ファーム」の考え方を知り、自分たちが行っている交流活動がきちんとしたコンセプトを持って取り組むべき価値のある活動であると認識しました。
気持ちとしては、「五里霧中」の状態から、目の前の霧が一気に消え、遠くの風景までもがクリアに見えたような気分でした。

《地域交流牧場全国連絡会発足以後》
全国の同じような活動をしている牧場との交流や情報交換を通じて、自分たちの活動が特殊なものではなく、普遍的な価値を持つ大切な活動なのだという思いを強く持つようになりました。
当時、他の牧場の方々も同じような思いを持っていたのではないかと思います。
そのような状況下、中央酪農会議の呼びかけで「地域交流牧場全国連絡会」が発足しました。会の名前も、地域での交流活動を大切にしようという考え方から付けられたように記憶しています。
会が発足してからは全国のいろいろな牧場の活動や思いを知るようになり、自分たちの日頃の交流活動をする上で大変勇気付けられました。
また、仲間の活動に刺激を受けながら自分たちの活動も向上させようと取り組みました。
私にとっては、会の存在が自分の活動を肯定付けるよりどころとして、とても貴重な存在でした。また、全国の牧場の方々の献身的で先進的な取り組みにもおおいに励まされてきました。
私どもの牧場でも、次第に体験の受入れや消費者との交流活動を活発化させ、平成16年には乳製品の手作り体験館と新しい搾乳体験場を作り、より多くの方が酪農体験を出来るようにしました。
小学校や中学校の生徒から一般消費者の方まで、平成20年には延べ人数で年間約14,000人が酪農体験や乳製品の手作り体験をし、その人数は年々増え続けています。
私どもが地域で交流活動をする上で、会の活動自体、とても貴重なものだと思いますが、会を通じて出来上がった全国の仲間とのネットワークが、なによりも大切なものだと感じています。

《地域交流牧場全国連絡会の今後について》
発足から10余年が過ぎ、会をとりまく状況も変わってきました。 当初は、それぞれの牧場がボランティア的におこなう活動でもよかったのかもしれませんが、交流活動に対しても期待される役割が出てきました。
牛乳の消費不振と乳製品の値上がりが続く中、酪農の業界において「酪農理解の獲得」「酪農理解の促進」が大切な意味をもつようになってきました。
「酪農理解の獲得」「酪農理解の促進」に関して、メディアやさまざまな広報活動を通じて広く消費者に訴えることも大切ですが、消費者に皮膚感覚でより深く伝える手段として、交流活動や体験の果たすべき使命が出てきたと感じます。
組織や団体が社会や消費者に全体的に広く訴える活動と、個々の牧場が体験や交流を通じて個々の消費者に直接深く伝える活動が連携して初めて、消費者に強く響く活動になると思います。
地域交流牧場全国連絡会自体は、個々の牧場が自分たちの思いで勝手に組織している団体に過ぎないかもしれませんが、会の、また会員牧場の担うべき役割は、今後ますます重要になっていくと確信しています。