田舎暮らしを共有したい

北海道野付郡・オシダファーム

北海道別海町で酪農の実習を4年間やっていた息子から「新規就農したいが一緒にやらないか。田舎暮らしをしたいと言っていたよね。簡単な作業だけでもいいから手伝って欲しいのだが・・・・」との話に乗って33年間勤めていた高校の教師を辞め、別海町に来てしまいました。あれから十数年が経ちます。

別海町は1,000軒に近い酪農経営者がおり、それを4農協が取り仕切っています。
牛の数は十二万頭、人口は一万七千人で、何と人の7倍牛がいることになります。
酪農経営は息子夫婦。私達夫婦は、手伝いながらこの地を楽しみたいとの思いでログハウスを建て、馬・羊・山羊を飼い、野草や野鳥の観察、菜園作り、山菜採り等をしているうちに、この地の楽しみを独り占めするのが勿体無いと思うようになり、来られる方と共有したいとグリーンツーリズム活動に取り組み始めました。

家内は農山村漁村女性活動支援協会のファームイン講座に参加後、ドイツとフランスのファームイン視察に出かけ、帰国後「我家でも欧州に負けないファームインが出来る」との思いを語ってくれました。
地域交流牧場全国連絡会に加入したのは、確か平成11年だと記憶しています。



ファームインは今年で10年になります。家族連れでの滞在が多いですが、小学生から社会人まで酪農体験の希望があり、2日から10日の受け入れをしています。
体験は酪農に留まらず、畑作から土木、大工、左官、塗装、など百姓は百の仕事をやらなければ生産が出来ないことを説いて何でもやらせており、特に作業には創意工夫がつき物であることを体得させています。

62haの牧草地と90頭の牛。輪換放牧しており、この町では平均より少し小さな経営なので、配合飼料・燃料費・肥料等の値上げでやりくりが大変だと息子はこぼします。農政の貧弱さが痛感させられています。
私は、育成牛や乾乳牛の世話、搾乳牛舎の掃除は勿論、牧草の収穫作業も手伝っていますが、毎日、朝夕の仕事があるのは体調管理には大変良く、食事が美味しいのは何よりで、心身ともに健康的な生活に感謝しています。

夏には小学生や高校生の「田舎くらし・農業体験」をお世話します。
宿泊日数とそれぞれの個性に合わせてカリキュラムを組み、指導することは、長年教師をやっていたことから苦にならず、遣り甲斐を感じています。
酪農に関心を持たせるためには酪農教育ファームの資料を利用していますが、牛に関することにとどまらず、馬や羊の観察から人間の体のつくりや器官の働きにまで触れることで問題を身近に感じ、理解度が深まり、食育にもつながっていきます。
小学4年生2人に牛床の凸凹をモルタルで修理させたところ、どう見てもモルタルが足りないことに気づいた子供たちは、セメントを買ってきて欲しいと言います。足りなかったら何とか工夫するように話し、考えさせます。30分しても解決策が見つからないと石を拾ってこさせて洗い、並べた上にモルタルを塗ることを教えます。
彼らの「そうか」との驚きにより創意工夫の面白さを体感させることもあります。



24時間共に生活していると、挨拶から食事の仕方、片付け方等、気づくことは多々あります。
私達夫婦がその都度話し合って、その個(子)に合った生活指導をするようになってきました。

農業体験者だけではなく、一般の方が牧場でノンビリと過ごす滞在も歓迎しています。
私達夫婦とお客さんが同じ食卓を囲むので、ここでどんな過ごし方をしたいのか、どんなことに興味を持っているのかをそれとなく感じ、そのニーズに沿った対応をすることに心掛けています。
中には、部屋から一歩も出ないで食事の時だけ出てくる人もいますが、殆どの方は景観を楽しみ動物達と触れ合います。
朝早く起きた方には、子牛の哺乳体験をしてもらっており、牛床掃除を希望する方もめずらしくありません。ほんの10分でも牛と関わることで親しみを覚えてくれるのがうれしい。

これからもアットホームなファームインとして来訪者と共に田舎暮らしを楽しみたい。